呼ばれて着いた店は、地下にある少々怪しげで安価な中華居酒屋だった。新規開拓ということでこの店を選んだ佐山と平田は、既に瓶ビールを数本空けていた。腹を減らしていた私は早々につまみを頼んだのだが、量こそ少ないが安価で味も悪くなかった。程なく、清宮が合流し4人で他愛も無い会話を肴に、だらだらと酒を飲んでいた。夜も更け、そろそろ帰路につこうかということになり、さてお会計を、と店員に頼んだ。
『お会計はこちらになります。』
我々は目を疑った。何故こんなに高いのかと。酒もつまみも決して高くなくむしろ安いくらいの単価であり、そこまで大酒大飯を食らったわけでもなかった我々は疑問を抱いた。
『もしや騙されているのではないか』
誰が言ったか定かでないが、取り敢えず店員に確認をすることにした。
『この会計は間違っているのではないだろうか?』
『いいえ、こちらになります。』
当然、話は平行線だった。
『あなたたちはこれだけビールを呑んだ。』
と、空き瓶を我々の眼前に提示してきた。然し瓶ビールを何本呑んだかなど到底覚えているわけも無く話は全く進まなかった。
『もう無視して出よう』
誰が言ったか定かでないが、そんな案まで出たが腑に落ちぬまま大枚をはたいて其の店をあとにした。
『どうもありがとうございました。またお待ちしております。』
生憎もう二度とこの店の敷居を跨ぐことはない。
もやもやした気持ちを抱え我々は解散することとなった。私は平田と帰路が同じだったため、平田の家に寄って一杯飲み直そうということになった。数分で平田のマンションに到着し、二階まで階段を上がり一番奥に位置する平田の部屋へ入った。先程のもやもやを払拭すべく酒を飲み直したが夜も深かったため、私はあまり長居すること無く帰ることにした。平田の部屋を出ると、老人・中年・若者が混ざった男女5、6人くらいが階段を上がってきて平田の隣の部屋に入っていくところだった。こんな夜更けに何事かと何やら違和感を覚えたが、彼らは私に気がつくと話しかけてきた。
『こんばんわ。雨ですねぇ。』
妙に愛想良く挨拶をしてきたので更に違和感が強まった。私は軽く挨拶をし、彼らが部屋へ入って行くところの後ろを通ろうとした時、最後に残った老人が私に小さな声でこう言ってきた。
『実はな、今日婆さんが死んでな。』
私は耳を疑った。見ず知らずの私に何故それを伝える必要があるのかと。そもそも真言か虚言かは当然分からないが。すると、先に部屋に入っていた人が
『すいませんねぇ。ほら、おじいさんもう中へ入りましょう。』